サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を経営していると、重要事項説明書や契約書の内容を確認する機会があります。その中に「入浴、排せつ、食事等の介護サービス」や「排泄介助」といった項目が記載されているケースもあります。
しかし、「重要事項説明書に書いてあるから問題ない」と考えてよいのでしょうか。
特に、サ高住と訪問介護事業所を同一法人や関連法人で運営している場合には、住宅サービスと介護保険サービスの区分を改めて確認することが重要です。
サ高住の重要事項説明書に排泄介助と書いてあれば大丈夫なのか
まず押さえておきたいのは、サ高住で排泄介助を行うこと自体が違法だという話ではないということです。
問題になるのは、重要事項説明書や契約書では「サ高住側が排泄介助を提供する」となっている一方で、実際には訪問介護事業所が同じ排泄介助を行い、そのサービスを介護保険として請求しているようなケースです。
つまり、確認したいのは「排泄介助をしているかどうか」だけではありません。
住宅事業者が提供するサービスなのか、それとも介護保険の訪問介護として提供するサービスなのか。この区分を明確にする必要があります。
住宅サービスと介護保険サービスを区分する
サ高住には、安否確認や生活相談など、住宅に付帯する基本的なサービスがあります。
一方、入居者が介護を必要とする場合には、訪問介護などの介護保険サービスを利用することもあります。
ここで重要なのが、契約しているサービスと実際に提供しているサービス、さらに介護保険で請求しているサービスの内容が一致しているかという点です。
例えば、重要事項説明書に「排泄介助」と記載され、住宅側の料金設定もあるとします。
ところが、実際の排泄介助は訪問介護事業所が行い、その内容について介護保険の訪問介護費を請求している場合、住宅サービスとして契約しているサービスと、介護保険サービスとして請求しているサービスが同じものになっていないか確認する必要があります。
同一法人でサ高住と訪問介護を運営している場合は要注意
特に確認しておきたいのが、サ高住と訪問介護事業所を同一法人、または関連法人で運営しているケースです。
同じ法人の中で住宅事業と介護事業を運営していると、現場では「同じ入居者に必要な介助をしているだけ」と考えてしまうことがあります。
しかし、事業者が同じであっても、住宅サービスと介護保険サービスは同じものではありません。
誰がサービスを提供したのかだけを見るのではなく、次の点まで確認しておくことが大切です。
- 誰のサービスとして契約されているのか
- 何の対価として料金を受け取っているのか
- 実際には誰がサービスを提供しているのか
- 介護保険では何を請求しているのか
- 重要事項説明書、契約書、実際のサービス内容に違いがないか
老人ホーム経営で重要なのは「書類」だけを見ることではない
老人ホーム経営や小さい介護施設の経営では、入居者獲得や職員確保など、日々の経営課題が多くあります。
その一方で、安定した施設運営を続けるためには、契約やサービス提供の内容を整理しておくことも重要です。
「国のひな形に書いてあるから大丈夫」と考えるのではなく、自社で使用している重要事項説明書や契約書を確認し、実際の現場でどのサービスを誰が提供しているのかまで確認してみましょう。
特にサ高住と訪問介護を組み合わせて運営している場合は、住宅サービスと介護保険サービスの線引きが曖昧になっていないか、定期的に見直すことが施設運営のリスク管理につながります。
介護施設経営では「入居者獲得」と同じくらい運営の確認が重要
介護施設経営では、入居者獲得方法や稼働率を考えることも大切です。しかし、入居者を増やして事業を拡大していくほど、契約内容と実際のサービス提供、介護保険請求の整合性を確認することも重要になります。
とくに、サ高住と訪問介護を同一法人・関連法人で運営している経営者や管理者は、「同じ法人だから問題ない」と考えず、一つひとつのサービスを整理してみることをおすすめします。
まずは、自社の重要事項説明書を開き、排泄介助などの介護サービスについて、誰が提供するサービスとして記載されているのかを確認してみてください。
そのうえで、契約内容、料金設定、実際のサービス提供、介護保険請求までを順番に確認することが、サ高住の適切な運営を考える第一歩になります。
※本記事は、サ高住の運営上確認しておきたいポイントを整理したものです。個別の契約や介護保険請求の適法性については、関係法令や自治体等の最新の取扱いを確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
まとめ
サ高住の重要事項説明書に「排泄介助」と書かれていることだけで、直ちに問題があるとはいえません。
重要なのは、住宅サービスとして契約している内容と、実際に提供しているサービス、そして介護保険で請求している内容が一致しているかを確認することです。
特に、サ高住と訪問介護を同一法人・関連法人で運営している場合は、住宅サービスと介護保険サービスの区分を明確にしておくことが重要です。
小さい介護施設の経営でも、老人ホーム経営でも、事業を安定して続けるためには、入居者獲得方法だけでなく、契約・サービス提供・介護保険請求まで含めた運営体制の確認が欠かせません。